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第1章:トヨタ生産方式とは(基本思想と2本柱)
第2章:ジャストインタイム生産とは ⇒ このページはココ
第3章:ニンベンの付いた自働化とは ※無料会員以上限定
第4章:ジャストインタイムと自働化の関係 ※法人会員限定
第5章:かんばんの基本について ※無料会員以上限定
第6章:平準化について(前編) ※無料会員以上限定
第6章:平準化について(後編) ※法人会員限定
第7章:7つのムダとは
「ジャストインタイム生産とは」動画講義
「ジャストインタイム生産とは」スライド講義
第2章目次
1.ジャストインタイムとは
2.ジャストインタイムの前提条件
3.ジャストインタイムの原則
4.ジャストインタイムを成立させるために
5.第2章まとめ

1.ジャストインタイムとは

トヨタ生産方式の2本柱
この基本思想を貫くトヨタ生産方式の2本柱は、次の2つです。
1つは、ジャストインタイムで、もう1つは、自働化です。
本講義では、1本目の柱である、ジャストインタイムについて説明していきます。

ジャストインタイム生産とは
「供給したいモノを、供給したい時に、供給したい分だけ運搬すること。」でもありません。
「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、流れるように停滞なく」造り、運搬することです。
ジャストインタイム生産においては、多めの在庫を持ってはいけません。
一方で、少ない在庫しか持たないことで、お客様を待たせるようなことになってもいけません。
この一見相反することについて、追求していくことが、ジャストインタイム生産なのです。

2.ジャストインタイムの前提条件

使い方を間違えると凶器に
例えば、部品を発注する側が、その日の状況によって、コロコロと、「やっぱり今日は1個しか必要じゃないから、1個だけ届けて。」という対応や「今日は沢山必要だから、いつもの2倍持ってきて。」というような、上から目線の実に身勝手な対応をしていたら、サプライヤーはもう大変です。
サプライヤー側は、「えぇ!?1個だけ運送すると、運賃が高額になるんだけど・・・」、「いきなり2倍って言われるなら在庫沢山持っておかないと・・・」といった状態・考え方になってしまい、本来の「原価低減」とは真逆の方向に向かってしまうのです。
このような発注側の思うままのやり方に従うことは、本来のジャストインタイムではありません。お互いが利益を上げていくための手段の1つがジャストインタイムであり、そのような一方的な押し付けにならないようにしなければいけません。

「平準化」という考え方が必要不可欠
具体的には、「平準化」という考え方が必要不可欠であり、ジャストインタイムの前提条件となります。
平準化は、何日先の何%までなら変更が可能かを、「事前に明確にして」、両者で合意するものです。
「必ずこの日数で決める」というような決まりはありませんが、合意の決め方の事例について紹介します。

まず、現在から2ヶ月、3ヶ月先は、予測数として発注側からサプライヤーに提示します。
そして、翌月分は、内示情報として、提示します。内示情報とは、発注側がサプライヤーへ提示する、仮数量情報のことです。
この時、予測情報と内示情報の数量変動は、半分~2倍までとする等の条件決めを行ないます。
そして、4週間先は、確定情報を出します。
この時、内示情報と確定情報の数量変動は±20%以内にする等の条件決めを行ないます。
そして、最後は納入指示となりますが、
この時も、確定情報と納入指示情報の数量変動は±10%以内とする等の条件を決めます。
大切なことは、発注側とサプライヤーがしっかりと取り決めを行ない、守るための改善を進める事です。変動があまりにも大きいと、サプライヤーは大きな負担を強いられ、最終的には原価アップに繋がってしまいます。その原価アップは、調達側にも当然影響してくるため、発注側、サプライヤー双方の協力が不可欠なのです。
なお、その他の平準化の狙い、ポイントに関しては、平準化の講義を学習してください。

3.ジャストインタイムの原則

1つ目は、「後工程引取り」です。後工程は、必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、前工程から引き取り、前工程は、引き取られた分だけ造ることを指します。
2つ目は、「工程の流れ化」です。工程内・工程間にモノを停滞させないこと、余分な在庫・バッファは造らないことを指します。
3つ目は、「必要数でタクトを決める」です。生産必要数に応じて、生産性を落とさずに、柔軟に人員を変動できる、少人化ラインをつくることを指します。@
平準化生産を前提として、これら3つの原則を守り、追求していくことがジャストインタイム生産では求められるのです。
それぞれの原則について、ポイントを確認していきましょう。

後工程引取り

後工程引取りの流れのイメージを見てみましょう。
お客さまからの商品の注文を受けて、組立工程では組立を始めます。
そして、組立で部品が使用されたら、その前の加工工程から部品が引き取られると共にかんばんが外れ、加工工程は加工を始めます。
さらに、加工で素材が使用されたら、今度は倉庫から素材が引き取られると共にかんばんが外れ、部品を手配し、入荷されたモノに、かんばんが付けられる、というイメージです。
このように、後工程引取りの流れを繋げ、お客様のニーズに沿った生産をするために、かんばんをツールとして活用します。

定量不定時での部品供給方法
まず、水すましは、事前に定められた定量の部品をラインへ供給します。
この時、次に部品補充を要求するタイミングの場所に、かんばんを付けておきます。
ラインでは、順番に部品を使っていき、かんばんが付いた箱の部品を使うタイミングで、かんばんを外し、かんばんポストに入れます。
かんばんポストに入ったかんばんは、定期的に回収され、部品が切れる前に、定量が供給される、というループを回します。

工程の流れ化

例えばこのように、各工程でまとめ生産を行なっており、仕掛品の滞留が至る所で発生している状態ではいけません。
細く早い流れをつくるために、理想は、1個流し生産や小ロット生産を行ない、モノの流れの滞留や淀みを無くしていくことが大切です。プレスや鋳造等の切替が必要な製造工程では、段取り短縮等を行ない、まとめ生産からの脱却を目指していくことも求められます。

そのようなムダが発生しないように、ラインバランス改善や同期化を進めていくことが必要になります。
当然、改善された作業は、しっかりと標準へ落とし込み、継続的に改善を行ないながら、標準作業をつくり込んでいかなければいけません。

整流化してモノを流す
このような乱れたモノの流れでは、どうしても滞留ができてしまいます。
それを、このような整流化された淀みのないモノの流れに変えていくことが大切です。
以上のように、工程の流れ化は、1つ1つの作業改善から工程間のモノの流れまで含めた工場全体の取組みが必要不可欠です。
個別最適ではなく、全体最適を目指して工程を改善していくようにしましょう。

必要数でタクトを決める

タクトタイムは、稼働時間/生産必要数で表されます。この数式が表しているように、タクトタイムでモノを造るというのは、必要数が少なければ、少ないなりの造り方を、必要数が多ければ、多いなりの造り方をすることを意味します。
つまり少人化ラインをつくることです。
いつでも固定人員でモノを造っていたらどうなるでしょうか。
このイメージ図で示すように、必要数が少ない時は、造りすぎのムダが発生し、生産必要数が多い時は、欠品のリスクが発生してしまいます。

売れに追随できる柔軟性を持つ
売れに追随できると、このようなイメージで生産計画を立てることが可能になり、それに応じて、在庫過多、欠品のリスクは減少していきます。
ジャストインタイム生産の為には、売れに追随できる柔軟性を持つ少人化ラインの構築が必要不可欠なのです。

4.ジャストインタイムを成立させるために

ジャストインタイムを成立させる5つのポイント
・人の定着と多能工
・部品供給の安定化
・設備停止の撲滅
・5S、2S3定
・自働化レベルの向上・品質の安定化
それぞれについて、概要だけ確認していきましょう。

人の定着と多能工
正社員、パート、派遣社員、請負等に関わらず、人の定着率が95%以下になると、生産性・品質は不安定になります。
95%を切らないように、定着率を維持管理していくことが必要です。
また、突発休暇が出た場合でも、それをカバーして安定生産出来るように、多能工化の推進が必須です。

部品供給の安定化
当然のことながら、たとえボルトが1本無くても、遅れても製品は完成しません。
製品を製造するために必要な全ての部品が、計画に沿って納入されることが必要不可欠です。

設備停止の撲滅
設備が突発停止してしまい、製造が出来ない状態が時折発生していたのでは、止まった時の為に、在庫や時間の余裕を持たなくてはいけなくなり、ジャストインタイムが成立しません。
その状態から脱皮するためにも、予防保全を中心とした設備稼働の安定化が必須となります。

5S、特に2S3定
組立をする際に、治工具や部品をイチイチ探していたのでは、必要な時に必要なモノを供給できません。
整理整頓、2S3定をはじめとした、5Sの仕組み・定着が必要不可欠となります。

自働化レベルの向上・品質の安定化
不良が時折多発するような状態では、必要な時に必要な分だけ後工程に渡すことが出来なくなります。
異常が出たら止まる仕組みを導入し、品質をつくり込む取組みが必要不可欠となります。
詳細は、ニンベンの付いた自働化の講義で学習を行なってください。

5.第2章まとめ

発注側が無理な要求を繰り返していると、サプライヤーは欠品を防ぐために、在庫を沢山持つ等の、本来の原価低減とは真逆の方向に進んでしまうことになります。
そうならないように、数量の変動幅等の平準化の条件を、発注側とサプライヤーとで合意しておくことが必要です。
前提条件の平準化と3原則を混同しないように注意しましょう。
平準化は、絶対守らなければ成立しないもの、3原則は、基本的にその方向性で進めるべきもの、という認識をしておきましょう。

以上で、「トヨタ生産方式基礎講座 初級編 第2章:ジャストインタイム生産とは」の講義を終わります。
引き続き、「第3章:ニンベンの付いた自働化とは」の学習を進めていきましょう。
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