ものづくりにおいては、各製造工程が不具合品を後工程に流さない「自工程保証」の考え方で仕事を行なっていくことが必要不可欠です。普段顧客と接点がない工場内でも、顧客指向でものづくりを行なうために大切な「後工程はお客様」という考え方を本講義でしっかりと理解するようにしましょう。
講座ナビ
第1章:品質優先の考え方
第2章:後工程はお客様(自工程保証の考え方) ⇒ このページはココ
第3章:プロセス管理と源流管理 ※無料会員以上限定
第4章:標準化の必要性 ※法人会員限定
第5章:重点指向の考え方 ※法人会員限定
第6章:品質改善と維持管理の考え方(PDCAサイクルとSDCAサイクル) ※無料会員以上限定
「後工程はお客様(自工程保証の考え方)」動画講義
「後工程はお客様(自工程保証の考え方)」スライド講義
1.後工程はお客様とは
自分たちの仕事を引き受けてくれる後工程はお客様!
後工程はお客様とは、「お客様である“後工程”に喜んで頂ける製品やサービスを提供すること」を指します。ここで言う後工程とは、自分の仕事の次の工程のことです。
自分達の仕事を引き受けてくれる後工程は、お客様だと思って接することが非常に大事な考え方となります。
ではなぜ、同じ会社なのに、後工程はお客様の考え方が必要になるのでしょうか?
これには明確な理由があります。

普段製品やサービスを購入してくれるお客様と直接接触のない部門では・・・
工場の生産部門等はその代表であり、クレームや厳しいお客様の声を普段から直接聞くことが少ないため、ややもすると、自分達の都合を優先した考えになりがちです。自分達の都合を優先してばかりいると、いずれお客様に見向きもされなくなってしまうため、絶対に避けなければなりません。
良い品質を最終的なお客様に届けるためには、全ての工程、全ての関係者が、自分の仕事での責任を果たすことが大切なのです。

2.自工程保証の考え方
自分の仕事での責任を果たす
自分の仕事での責任を果たすには、まずは、「次の工程に払い出す製品の品質を保証」しなければなりません。なぜならば、前工程の品質が悪ければ、後工程で品質の良いものを作り出すことはできないからです。
従って、後工程も「前工程からは品質の良いものしか受け取らない」という意識を持つ必要があります。つまり、後工程は前工程に対して正しい品質の要求を行なうこと、そして気が付いたことは前の工程に必ずフィードバックすることが大切です。
最初の工程から最後の工程まで、全員がこの考え方で仕事を行えば、必ず品質の良い製品を作り出すことが可能です。これがお客様の声を全ての工程が意識し、お客様を考えたものづくりをするために必要不可欠な考え方となります。

こんな考え、持っていませんか?
「最後に検査工程があるから、不良はそこで止めてくれる」
「不良があったら後工程の作業で気付くので大丈夫」
「自分の工程だけで精一杯、後工程のことまで考えられない」
これらの考え方は完全に間違いです。このような考え方をしている人がいる職場では、いつか不適合品がお客様へ流出してしまい、大問題に発展してしまうかもしれません。
今一度、自工程でしっかりと品質を保証する理由を考えてみましょう。

自工程で保証すべき理由①
モノの製造やサービスの提供においては、失敗はつきものではあるものの、不具合が出るたび、それ自体は全て損失となります。
そして、製造工程では、後ろに行けば行くほど、付加価値が付いていきます。
つまり、後工程ほど、不具合発生時の損失や影響は大きなものとなるのです。
従って、「前の工程で起きた不具合も最終検査で止めればよい」という考えではなく、品質を各工程で作り込むという考え方が非常に重要になります。不具合は出た工程で必ず止め、後工程には絶対に流さないという考え方が、損失を最小限とするために必要不可欠です。

自工程で保証すべき理由②
1枚1枚のチーズ、つまり1つ1つの工程において、工程内検査やチェック体制の穴が空いています。この穴は、特定の場所に出る訳ではなく、日々状況によって動き回ります。そして、この穴が大きい場合、あるタイミングで全ての工程で穴が繋がってしまい、顧客にまで不具合品が流出してしまうことがあるのです。
このスイスチーズモデルは、まさに不具合流出の原理をうまく表しており、検査やチェックの穴が大きいほど、顧客への流出に繋がってしまうことを肝に銘じておかなければなりません。
流出を防止するためには、1枚1枚のチーズの穴を最小限にする製造プロセスづくりが必要不可欠です。チーズの穴が大きくなってしまう要因を少なくすること、つまり自工程で保証できる体制を築くことが、流出防止の鍵となります。
当然ながら、不良品が顧客に渡ると、会社の信用が失墜します。
失墜した信用を取り戻すまでには、何十年という歳月がかかります。
二度と信用が戻らずに事業を続けられなくなることすらあります。
ものづくりに関わる全社員が、後工程はお客様と考えて、自分の仕事に責任を持って対応することが求められているのです。

3.後工程はお客様を満足させるには
後工程はお客様を満足させるポイント
まずは、「後工程の立場で物事を考える」ことです。
後工程に、「どういうものを提供したら仕事が楽になるか」を考えるようにしましょう。自分達が前工程からどんな物を受け取りたいかを考えると、答えが見えてくるはずです。
次に、「コミュニケーションを良くする」ことです。
発生した不具合内容等を、素早く確実にフィードバックすることが大切です。言葉だけでなく、現物や写真等を活用し伝達することもポイントです。
最後に、「良否の判断基準を明確にする」ことです。
良否が曖昧にならないように、判定基準を明確に決めるようにしましょう。担当者によって判断が曖昧にならないような基準をつくることがポイントです。

会社全体で「後工程はお客様」という意識を統一する
後工程はお客様という意識を全社員が持つことが、品質不具合を減らし、職場のチームワークを生むことに繋がります。そのことが、自工程のためになり、そして、結果的に会社のためになるのです。
「後工程に喜んでもらえるモノやサービスを提供する」という考えを持つことで、工場の中でも顧客を意識したものづくりが連鎖していきます。
このような最終的なお客様を意識したものづくりが、品質の良い製品やサービスを生み出す一番の近道になることをしっかりと認識して、ものづくりに携わっていきましょう。

4.第2章まとめ

以上で、「品質管理と品質改善活動 第2章:後工程はお客様(自工程保証の考え方)」の講義を終わります。
このコンテンツが、あなたの今後の活動に役立つことを、心から願っています。
引き続き、その他の講義も是非ご覧ください。
講座ナビ
第1章:品質優先の考え方
第2章:後工程はお客様(自工程保証の考え方) ⇒ このページはココ
第3章:プロセス管理と源流管理 ※無料会員以上限定
第4章:標準化の必要性 ※法人会員限定
第5章:重点指向の考え方 ※法人会員限定
第6章:品質改善と維持管理の考え方(PDCAサイクルとSDCAサイクル) ※無料会員以上限定