i-006までの講座では、IEの基本となる各種分析方法や分析の考え方について学習を行ってきました。
本講座では、それらの各種基本分析を組み合わせた、応用的な分析手法の活用方法や活用事例について学んでいきます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-007:方法研究と作業測定を組合せた応用的手法
第1章:連合作業分析 ⇒このページはココ!
第2章:ラインバランス分析(会員限定公開)
第3章:プラント・レイアウト(基本編)【法人向けサービスにて提供中】
第4章:プラント・レイアウト(改善編)【法人向けサービスにて提供中】
「第1章:連合作業分析」動画講義
「第1章:連合作業分析」スライド講義
本講座の目次
第1章:連合作業分析
第2章:ラインバランス分析
第3章:プラント・レイアウト(基本編)
第4章:プラント・レイアウト(改善編)

第1章スタート!
第1章では、連合作業分析とはどんなものなのか、ManチャートやM-Mチャートの活用の仕方と事例について学びます。

第1章の目次
1. 連合作業分析とは
2. 人-機械作業分析表(M-Mチャート)の活用の仕方
3. 人-機械作業分析表(M-Mチャート)の活用事例
4. 組作業分析表(Manチャート)の活用の仕方
5. 組作業分析表(Manチャート)の活用事例
6. 第1章まとめ

1. 連合作業分析とは

作業者および機械の組み合わせ(連合)
組み合わせには様々あります。例えば、
・1人の作業者と1台の機械
・1人の作業者と複数の機械
・複数の作業者同士
・複数の作業者と1台の機械
・複数の作業者と複数の機械
などです。
ここでワンポイントです。
生産現場だけではなく、事務所、工事現場、病院、交通機関等、様々な場面で組み合わせ作業は存在します。
連合作業分析は、生産現場だけではなく、様々な業種で活用できる手法です。

連合作業分析の用途
・人と機械の組み合わせ作業に対して効率を高めたい時
・組作業(共同作業)の編成効率を高めたい時
・新設ラインにおいて機械の必要台数を検討する時
・機械化・自働化を進めたい時
・サイクル作業において機械の停止時間を短縮したい時
・準備作業・段取り作業・後始末作業等の合理的な組み合わせを検討したい時

2種類の連合作業分析表
1つは、「人-機械作業分析表」です。別名、Man-Machine Chartとも言います。作業者と機械の連合を分析する場合に活用します。
もう1つは、「組作業分析表」です。複数の作業者同士の連合を分析する場合に活用します。
ここでワンポイントです。
実務においては、人-機械作業分析表は、「M-Mチャート(エムエムチャート)」、組作業分析表は、「Manチャート(マンチャート)」と呼ぶことが多いと覚えておきましょう。

2. 人-機械作業分析表(M-Mチャート)の活用の仕方

M-Mチャートのイメージ
これがM-Mチャートのイメージです。
このような表により、作業者と機械がそれぞれ何を行っているかを時系列で可視化します。この場合、50~70秒において作業者が手待ちになっていること、機械は50~70秒以外は停止していることが分かります。
ここでワンポイントです。M-Mチャートは縦書き・横書きのどちらでも構いません。作業者と機械の時間軸をしっかり揃えるようにしましょう。

“人の手待ち・付随作業”と“機械の停止”に着目
人の作業に対しては、
・手待ちや付随作業がどのくらいの時間、どのくらいの頻度で、どんなタイミングで発生しているか
・手待ちや付随作業により機械を停止させていないか
等の視点で問題点を見つけていきます。
機械に対しては、
・どのくらい機械が停止しているのか
・なぜ機械が停止しているのか
・どのような動かし方をしたら、機械の能力を最大限発揮できるのか
等の視点で問題点を見つけていきます。

M-Mチャートは何が分析できる?
1つは、機械Xの停止のほとんどは、作業者Aが付随作業を行っている間に発生していることです。
もう1つは、作業者Aは機械Xが自動運転中にやることが無くて手が止まっていることです。
問題点が明確になると、「付随作業を機械Xの自動運転中に行うことが出来れば、手待ちも機械停止もなくなるのではないか」という改善の方向性が見えてくるのです。

視覚化すると思わぬロスやムダが浮かび上がる
30秒の短縮により、30%の能率改善となります。
組み合わせ作業には、現場で作業を目視するだけでは分かりにくいムダが潜んでいることが多いものです。M-Mチャートなどにより視覚化することで、思わぬロスやムダが浮かび上がることもあると覚えておきましょう。

3. 人-機械作業分析表(M-Mチャート)の活用事例

1つ目の事例!
条件として、作業者A,Bは同じ作業を実施しており、それぞれのサイクルは70秒とします。また、機械A,Bは全く同じ能力とします。
連合作業分析を行ったところ、ここに示すような状態であることが分かりました。
さて、この状態に対して、どのような方向性で改善を進めていったらよいでしょうか?ポイントになるのはどこか分かりますか?
そう、作業者の手待ちですね。

M-Mチャートで省人化!
そして、機械Aと機械Bのタイミングを少しズラし、2つの機械をグルグルと回りながら作業が出来るようにレイアウト変更も行っています。改善後のM-Mチャートを見ても、無理なく作業出来ることが確認できます。
これでもまだ手待ちや機械の停止が発生しており、更なる改善の余地も残っていますね。

2つ目の事例!
分注作業とは、医療・理化学分野の実験において、ピペットなどで試料となる液体を一定の容量ずつ吐出する作業です。改善前は、作業者Aが分注器にボトルをセットし、作業者Bが分注されたボトルにキャップを締めるという作業を行っていました。
改善前のM-Mチャートはここに示す通りです。分注器の停止、作業者Bの手待ち、そして、作業者Aの付随作業の多さが目立ちますね。
ボトルの保持や入替は、IE視点で見ると付随作業に分類されます。一見すると価値作業比率が高そうな工程も、連合作業分析によりチャートを描いて見ると、手待ちや付随作業がほとんどであったことが判明したのです。

省人化で生産性が2倍に!
2名から1名に省人化出来たことにより、生産性を2倍に向上させることが出来ています。

3つ目の事例!
改善前は、準備段取りの時間に機械が止まっており、非常にもったいない状態でした。
そこで、これらの外段取り化を行いました。これにより、サイクルタイムは70秒から55秒に短縮しています。
しかし、まだ作業者の手待ちが残ったままです。
そこで、機械Aだけではなく、機械Bも1人の作業者が担う多台持ちへ方法を変更しました。多台持ちを行うために、治具交換・材料セットのワンタッチ化を推進しました。また、手待ちを利用し他の作業との組み合わせを考えたことにより、生産性が倍増したのです。
以上、3つの事例を確認しました。
M-Mチャートは、人と設備の連合が発生する工程において、省人化を初めとして、サイクルタイム短縮や生産能力アップなどを検討する際に有効なツールであると覚えておきましょう。

4. 組作業分析表(Manチャート)の活用の仕方

組作業分析表(Manチャート)とは
複数の作業者が協力して1つの仕事を遂行する際、特定の作業者のみに負担が掛かり、他の人は見ているだけというような状態が生じることがあります。特定の人のみに負荷が掛かる状態は是正しなければなりません。
そのためにも、関わる作業者全員の状態を可視化し効率の向上を図ることが望ましいと言えます。1枚のチャートにして分析することで納得感を持ち負荷の平準化が出来るのです。

Manチャートのイメージ
各作業者の時間毎の作業状況を分析すると、多くの場合、このように偏りが発生していることが分かります。この場合、作業者A,B,D,Eは作業者Cに比べて余裕がある、つまりムダが発生していることになります。
ここでワンポイントです。
M-Mチャートと同じように、Manチャートも縦書き・横書きのどちらでも構いません。通常、Excelなどで作成しますが、自分で作成しやすい方法を採用しましょう。
チャートを描くと実情が見えてきます。手待ちを無くし全体最適な効率化を目指していくことが大切です。

Manチャートを活用した改善の考え方
負荷のバランスを取ることにより、改善後はサイクルタイム100secから60secまで40%の短縮となります。

この場合、作業者D,Eの作業を作業者A,Bへ振り分けて省人化が可能です。また、作業者Cの作業も一部振り分けることで、サイクル短縮も見込むことが出来ます。
改善の結果、作業者5名から3名まで省人化されました。また、サイクルタイムも100secから90secまで10%の短縮となっています。サイクル短縮により能力アップすべきなのか、省人化すべきなのかは、その工程が置かれている状況により変化します。状況に応じて適切な改善策を選定しましょう。

5. 組作業分析表(Manチャート)の活用事例

Manチャートの活用事例①
Manチャートと円グラフにしてみるとこのようになります。一目見ただけで、余裕幅が大きいことが分かりますね。
主作業比率が1/4に満たず、作業余裕が大きい状態であるため、改善の着眼点としては、2人作業から1人作業化を目指すことが妥当です。

改善後のManチャートはここに示す通りです。改善前に比べて、主作業比率は2倍に向上しています。
ただし、まだまだ作業余裕が存在するため、改善の余地は大きいと言えますね。

Manチャートの活用事例②
Manチャートを作成すると、このようになりました。
問題点としては、作業者Aの投入前検査の必要性と、作業者A,B,C全員に発生している手待ちが挙げられました。
この工程では、サイクルタイムは設備能力によって制約があるため、これ以上早くは流せません。そこで、レイアウトの改善により3人作業を2人作業化できないかという視点で検討を行っています。

それにより、同じサイクルタイムでも2名で作業が出来るようになったのです。これでもまだ十分な余裕を持てているので、2人でも無理のない負荷であると断言できますね。
Manチャートを使って視覚化することで、「何となく無理」「余裕が全くなくなるかもしれない」と言った、感情的な拒否反応に振り回されない改善を進めることができます。本当に余裕がないのか?本当に負荷が高いのか?等を数値で表すことによって、無理なく納得感の高い工程設計が可能となるのです。

6. 第1章まとめ


講義完了!
引き続き、「第2章:ラインバランス分析」の学習に進みましょう。


それではまた次の講義でお会いしましょう。

全章の学習は法人向けサービスにて提供中!
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もちろん、パソコンかスマホとインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学習が可能です。
i-006までの講座では、IEの基本となる各種分析方法や分析の考え方について学習を行ってきました。
本講座では、それらの各種基本分析を組み合わせた、応用的な分析手法の活用方法や活用事例について学んでいきます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-007:方法研究と作業測定を組合せた応用的手法
第1章:連合作業分析 ⇒このページはココ!
第2章:ラインバランス分析(会員限定公開)
第3章:プラント・レイアウト(基本編)【法人向けサービスにて提供中】
第4章:プラント・レイアウト(改善編)【法人向けサービスにて提供中】
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