稼働分析は、時間研究の中の1つの手法ですが、大事な分析手法であるため、1つの講座として学習していきます。
普段の現場の稼働状態を数値で可視化することは、実態を知ることに加え、自職場がどのくらいのレベルかを知ることにも繋がります。
本講座では、観測の方法としての連続観測法、セルフタイムスタディー法、ワークサンプリング法と、観測した結果を使った改善の方向性について学んでいきます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-005:稼働分析の考え方と活用法
第1章:稼働分析の概要 ⇒このページはココ!
第2章:連続観測法とセルフタイムスタディー法(会員限定公開)
第3章:ワークサンプリング法【法人向けサービスにて提供中】
第4章:観測結果の分析と改善の仕方【法人向けサービスにて提供中】
「第1章:稼働分析の概要」動画講義
「第1章:稼働分析の概要」スライド講義
本講座の目次
第1章:稼働分析の概要
第2章:連続観測法とセルフタイムスタディー法
第3章:ワークサンプリング法
第4章:観測結果の分析と改善の仕方

第1章学習スタート!
第1章では、稼働分析の種類について学び、人と機械の稼働の考え方について確認していきます。

第1章目次
1. 稼働分析とは
2. 人の作業の3分類とは
3. 機械の仕事の分類
4. 稼働分析の種類と特徴
5. 第1章まとめ

1. 稼働分析とは

稼働分析は作業測定に属する手法の1つ
位置付けとしては、時間研究の1種となりますが、作業測定においては使用頻度が高く、時間研究よりも稼働分析の方が有名となっています。

普段の仕事は本当に効率よくできている?
例えば、機械を操作する、組立をする、成形をする、材料を運ぶ、等の多くの要素によって仕事が進んでいきます。
それらの仕事は、どのくらいの割合なのでしょうか?本当に効率よくできているのでしょうか?
いくら口で「出来ている」と言っても、数字で確認できなければ、本当に効率が良いかは分かりませんよね。
そんな時に役立つのが、稼働分析です。

人や機械がどのような要素にどれだけの時間を掛けているか
時間研究の1つとして扱われ、「人の働きがどのような状況か掴み」、「改善の切り口を見つけ」、「改善前後の時系列的な変化をつかむ」ために有効なツールです。
稼働分析の活用場面としては、次のようなものが挙げられます。
まずは、作業改善の切り口を見つけたい時です。
生産活動においては、価値作業のみが価値を生む要素です。それ以外の要素は全て生産を阻害する要因であり、排除・削減する必要があります。
稼働分析では、価値のある作業の割合がどのくらいかを分析することができます。
また、稼働状況の時系列的な変化をつかみたい時にも有効です。
生産負荷に季節変動がある場合は、時期別・日別・時間帯に稼働状況の変化をつかむ必要があります。
変動要因を分析し、より安定した稼働率を維持する方策を決定するために、稼働分析は一定の役割を担うのです。

2. 人の作業の3分類とは

価値、付随、ムダの3種類
全ての作業は、価値作業、付随作業、ムダの3つに分類することができます。
価値作業とは、利益を出す(付加価値に繋がる)作業のことです。
形状・性質等、物を変化させる作業が該当し、出来る限り増やしたいものとなります。
付随作業とは、完全にムダではないが、付加価値に直結しない作業のことです。
今のやり方では必要な作業となりますが、出来る限り削減したいものとなります。
ムダとは、付加価値に結びつかないため、すぐにでも削減すべき作業のことです。
この中で、付随作業とムダを合わせて「広義のムダ」と呼ばれ、IE改善の対象となります。

価値、付随、ムダの例
価値作業には、加工や機械操作等が挙げられます。
付随作業には、段取りや測定、記録、清掃等が挙げられます。
ムダには、空歩行、手待ち、チョコ停、不良を作る時間等が挙げられます。
稼働分析により明確化された、これらの付随、ムダに該当する時間を、方法研究などでいかに削減することができるのかが、IEの実践におけるポイントです。

3. 機械の仕事の分類

機械の稼働に関する時間とロスの関係
まず第一に工場は、操業時間が決まっています。
操業時間の中には、実際に機械に電源を入れて負荷を掛けている「負荷時間」があります。
一方、生産量が少ない場合は、無理に機械を動かす必要はないため、計画停止を入れることも出てきます。
そして、負荷時間の内訳を見ると、実際に機械が稼働していた「稼働時間」と、機械が停止していた「停止ロス時間」に分けられます。
更に、稼働時間の内訳も見てみると、機械本来の性能を発揮できていた「正味稼働時間」と、性能が落ちてしまっていた「性能ロス時間」に分けられます。
正味稼働時間も更に細分化すると、しっかりと良品を造っていた「価値稼働時間」と、不良を造ってしまっていた「不良ロス時間」に分けることが出来ます。
このように、負荷時間の中には、大きく3つのロスがあり、これらが機械の効率を低下させてしまい、経過時間あたりの良品出来高を下げてしまうのです。
稼働分析では、価値稼働時間や各種ロスがどのくらいの割合を占めているのかを数値で明確化するために活用します。

停止ロスには大きく次の4つ
停止ロスには、大きく次の4つが挙げられます。
故障ロス、切替え調整ロス、治具交換ロス、立上りロスです。
その他にも、清掃点検、指示待ち、材料待ち、配員待ち、品質確認待ち、測定調整等があります。
品種切り替え、段取り替え、ドカ停、昇温待ち等がこれらの4つの停止ロスに当てはまりますね!

設備の7大ロスを覚えておこう!
チョコ停とは、数秒・数分程度の小さなトラブルが多発することを指します。
速度低下ロスは、機械の劣化によるスピード低下などが当てはまりますね!
不良ロスに関しては、不良手直しロスが挙げられます。
不良だけではなく、手直しをすることにより生じたロス時間もここに含まれます。
いま挙げた7個のロスが、設備の7大ロスと呼ばれています。
実務においても、この7つに関しては日報集計が必要となるものです。

図やグラフとして実情を表すことが稼働分析の役割
稼働分析では、以上で説明した時間の体系を照らし合わせながら、実際にはどのような割合になっているのか、分析により実情を明らかにしていくことになります。
つまり、最終的には図やグラフとして実情を表すことが稼働分析の役割なのです。

各種方法研究と合わせて活用しよう
・稼働分析により数字で実態を表す。
・方法研究等により改善を実施する。
・改善結果を稼働分析で評価する。
というような流れで、稼働分析は活用します。
稼働分析は、実態の把握や結果の評価に有効な手段です。
単独で行うものではなく、各種方法研究と合わせて活用していくと覚えておきましょう。

思っている価値比率は低いもの
実際には、価値作業はこんなに高い比率ではないことがほとんどです。
これが、ある会社で実際に観測した結果の実例です。
実際観測してみると、価値作業比率や価値稼働時間が10%程度であることも少なくありません。
もちろん業種によっても異なりますので、数字だけで一概に判断はできませんが、大事な視点として、まずは分析した結果を事実として受け止めて、そこからどのくらい改善できるかに目を向けるようにしてください。
他と比較することも無駄ではありませんが、まずは最初に調査した時点からどのくらい向上したのかを判断・評価することが基本となります。

4. 稼働分析の種類と特徴

稼働分析の代表的な3つの手法
1つ目は、連続観測法です。
現場観測やビデオ等で作業を連続的に観測する方法で、正確な測定が出来るが手間が掛かるという特徴があります。
2つ目は、ワークサンプリング法です。
観測するタイミングを一定のルールに沿って決め、観測した瞬間の稼働状況をサンプリングにより把握する方法です。
正確性は若干落ちるものの比較的手間を掛けずに実施が出来るという特徴があります。
3つ目は、セルフタイムスタディー法です。STS法とも言います。
自分の仕事の1日の実績を所定の記録表に書き込み、一定期間分を集計することで人の稼働の全体像を明らかにする方法です。
STS法は、連続観測法やワークサンプリング法とは異なり、作業者自身が自分の稼働状況を記録していく方法となります。

3つの手法の長所と短所
まず、連続観測法ですが、長所としては、
- 一定期間を観測するため、正確な時間値が測定できる
- 繰り返し作業の分析はもちろん、段取り替え作業など、非繰り返し作業の分析にも活用が可能
等が挙げられます。
短所としては、
- 観測者は1人1つの作業しか観測できないので、広範囲で実施する場合は人手が必要
- 観測中、作業者にずっと付いて回るので、観測者も作業者も精神的な負担が大きい
等が挙げられます。
次に、ワークサンプリング法です。長所としては、
- 1人が1度に複数の作業者を観測することができるので、1度に広範囲の調査ができる
- 作業者にずっと付いて回ることはないので、精神的な負担が小さい
等が挙げられます。
短所としては、
- 観測回数によっては、正確性が不十分である場合がある
- 日常の管理指標としては適していない
- 作業の発生頻度や作業手順を把握することができない
等が挙げられます。
最後に、セルフタイムスタディー法です。長所としては、
- 自分で自分の作業時間・業務時間を記録するので、調査のための特別な人手が不要
- 自分で時間を記録することで、時間の中に潜むムダに気付くことができる
等が挙げられます。
短所としては、
- 日報のように自分で記入するので、必ずしも正しいとは言えない
- つまり自分に都合の良いように記載してしまうことも否定できないこと
等が挙げられます。
このように、それぞれ長所・短所があるため、状況によって適した手法を選定することが大切です。

5. 第1章まとめ

単独で行うものではなく、各種方法研究と合わせて活用していきます。

講義完了!
引き続き、「第2章:連続観測法とセルフタイムスタディー法」の学習に進みましょう。



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もちろん、パソコンかスマホとインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学習が可能です。
稼働分析は、時間研究の中の1つの手法ですが、大事な分析手法であるため、1つの講座として学習していきます。
普段の現場の稼働状態を数値で可視化することは、実態を知ることに加え、自職場がどのくらいのレベルかを知ることにも繋がります。
本講座では、観測の方法としての連続観測法、セルフタイムスタディー法、ワークサンプリング法と、観測した結果を使った改善の方向性について学んでいきます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-005:稼働分析の考え方と活用法
第1章:稼働分析の概要 ⇒このページはココ!
第2章:連続観測法とセルフタイムスタディー法(会員限定公開)
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