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MODAPTS(モダプツ)法とは何か?考え方と基準値について解説
MODAPTS(モダプツ)法はどんな考え方?
PTS法は、MTM法やWF法、MODAPTS法などが手法として確立されています。
本講座では、MTM法やWF法より簡易的であり、動作を21種類の記号に簡略化した手法である、MODAPTS(モダプツ)法について詳細を確認していきます。
MODAPTSというのは、MODular Arrangement of Predetermined-Time Standardsから作られた言葉です。
ここでワンポイントです。MODAPTS法は、この説明だけでは少しイメージしにくいかもしれません。
動作研究で学習したサーブリッグ分析は覚えていますか?これに時間値を付けたものに近いとイメージすると良いと思います。
MODAPTS(モダプツ)法の特徴
MODAPTS(モダプツ)法の特徴は、次の通りです。
- オーストラリアのハイドが開発した簡易的なPTS法であること
- 人間の腕の動作を中心とした基本動作を、21種類の記号で分類したものであること
- 各記号は動作の内容と時間値で表されていること
- MTM法の288種類、WF法の439種類の記号と比べて習得が容易で分析スキルの差も小さく抑えられること
- MTM法やWF法はマスターするのに長期間掛かるが、MODAPTS法は、数日あれば基本のマスターが可能であること
- 精度も比較的良いため広く普及した手法であること
これらの特徴がありますが、特に、簡易的な手法ながら精度が比較的良いために、様々な業界で活用されているということが大きな特徴ですね。
MODAPTS(モダプツ)法の活用シーン
MODAPTS(モダプツ)法の活用シーンは次の通りです。
- 手作業要素の多い組立工程などの標準時間算出
- 作業改善効果や設備・治具の導入効果の事前測定
- 新規設備の操作性や操作時間における機器や装置のユーザビリティ評価
- 動作研究との組み合わせによるムダの発掘・作業改善
- あるべき姿(動作)の設定
- 原価の見積り、協力会社(納入先、納入元)との価格交渉
これらのシーンでMODAPTS(モダプツ)法は活用されています。
MODAPTS(モダプツ)法の3分類
MODAPTS法では動作を大きく3つに分類します。
1つ目は、移動動作で、5種類に分けられます。
2つ目は、終局動作で、6種類に分けられます。
3つ目は、それ以外の動作で、10種類に分けられます。
通常、移動動作の後に終局動作が起こるため、単独ではなく一対で行われます。
MODAPTS法では、時間の単位をMOD(モッド)で表現します。MODは人間の動作の最小単位を意味しており、1MODは0.129秒に相当します。
各動作の記号の数字は、その動作を行うのに要するMOD値を表します。
移動動作の5種類
では、詳細の定義を確認していきます。まずは、移動動作の5種類です。
5種類というのは、この絵に示すように、動作の場所によりM1からM5となります。
M1は、指だけで行われる動作です。指先が約2.5cm(1inch)動く動作とイメージしてください。
M2は、手首から先の手のひらと指で行われる動作です。動作距離が約5cm(2inch)の動作で、手首を回転させる動作も含まれるとイメージしてください。
M3は、肘から先を使って手・指で行われる動作です。動作距離が約15cm(6inch)の動作とイメージしてください。
M4は、上腕を主として肩から先の腕全体で行われる動作です。動作距離が約30cm(12inch)の動作とイメージしてください。
M5は、腕が伸びきった状態で肩が動く動作です。動作距離が約45cm(18inch)以上の動作とイメージしてください。
終局動作はの2種類
次に、終局動作についてです。終局動作は、2つに分けられます。
1つは、対象物に手を伸ばした後それをつかむ動作で、GetのGで表し、注意力の程度により分類します。G0は接触動作、G1は簡単なつかみ動作、G3は複雑なつかみ動作となります。
もう1つは、対象物を移動させた後それを置く動作で、PutのPで表し、注意力の程度により分類します。P0は簡単に置く動作、P2は注意して置く動作、P5はかなり注意して置く動作となります。
数字が異なるのは注意力の度合の違いです。数字が小さいものは、注意力を要しない動作で、数字が大きいものは、注意力を要する動作となります。
一般動作の10種類
なお、移動動作と終局動作以外に、一般動作も定義されており、全部で10種類あります。
L1は重量補正です。置く動作の発生毎に加算し、4kg増える毎に数字を1つ増やします。
E2は見る動作です。視線の移動と焦点合わせとなります。
D3は合否判定等の確認の動作です。
A4は圧力を加える動作です。体全体で力むようなイメージです。
R2は持ち替えの動作です。
C4は連続クランク動作です。ハンドルの回転等のイメージです。
F3はペダルを踏む動作です。1回毎に追加します。
W5は歩く動作です。1歩毎に追加します。
B17は立っている状態からかがんで再び立ち上がる動作です。
S30は椅子から立ち上がり再び座る動作です。
それでは分析のイメージを掴むために、
① 手を伸ばし、30cm先の受話器を左手でつかむ
② 右手で掛ける相手の電話番号を押す
という動作にMODAPTS記号を当てはめてみましょう。
①は、M4G1となります。
②は電話のボタンを押すために視線を移動させ焦点を合わせますので、E2が該当します。
そして、指でボタンに触れる動作は、M1G0となりますので、E2M1G0が1つのボタンを押す動作の記号です。
電話番号の桁数分、この記号が繰り返されるというように記号を割り当てます。
これでMODAPTS記号の当てはめ方に関して、基本は理解できましたね。
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