時間研究の概要【IE実践講座 時間研究:第1章】

この講座は、「i-004:時間研究の考え方と活用法」から第1章を限定公開しています。
※全章を学習の場合は、法人向けサービスをご検討ください。

動作研究は、方法研究に属する手法の1つです。あらゆる仕事には、必ず一番良いやり方があります。
本講義では、ただ漫然と現場を眺めるのではなく、一番良いやり方を追求する姿勢=モーション・マインドを持つために必要な知識について体系的に学んでいきます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。

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本講座の目次

目次です。本講座は全4章で学習を行ないます。

第1章:時間研究の概要
第2章:レーティングの考え方と評価方法
第3章:標準時間の考え方と設定方法
第4章:PTS法(MODAPTS法)

第1章学習スタート!

それでは早速、第1章:時間研究の概要について学習をスタートしましょう。

第1章では、時間研究とは何か、どのような考え方や視点で時間という資源を捉えていくのか、時間を測定する手段としてのストップウォッチ法とVTR法とは何かについて学習していきます。

第1章目次

第1章では、下記の順で学習を行います。

1. 時間研究とは
2. 時間研究の方法と視点
3. ストップウォッチ法とは
4. VTR法とは
5. 時間研究における改善の視点
6. 第1章まとめ

1. 時間研究とは

まずは、時間研究とは何か確認していきましょう。

時間研究は「作業測定に属する手法」の1つ

時間研究は、作業測定に属する手法の1つです。

時間研究の中には、ストップウォッチ法、標準時間、レーティング、PTS法等の各種手法が含まれています。
それでは時間研究の定義について確認します。

時間は平等に与えられている資源!

時間研究とは、仕事を要素に分割し、その実態を時間という尺度で定量的に測定・評価し、問題点を分析するための手法です。

どんな企業にも、どんな人にも平等に与えられている時間。この時間をどう扱うのかは、経営において最も大事な要素の1つです。

時間研究は、仕事の中に潜んでいる非生産的要素を作業測定によって定量的に評価し、極力排除または軽減するアクションに正しく結び付けるために不可欠な方法となります。

時間を正しく把握することは、改善の第一歩です。第一歩を踏み外さないように、正しく時間を把握する方法を身に付けることが時間研究の狙いでもあります。

現状の姿を時間として捉える

現状の姿を時間として捉えることはなぜ必要なのでしょうか。

人間という生き物は、直感や雰囲気等の“感覚”で物事を判断していることが多いと言われています。全ての物事に対して証拠を揃えたりせず、「おそらくこうであるはず」「きっとこうに違いない」というように、少ない情報で感覚的に判断・決定を下していくことで、効率的に物事が進んでいるのです。

一方で、これらの感覚は正しいことも多い反面、間違っていることも少なくありません。

思い込み、先入観、勘違い。これらによりミスや失敗をしてしまった人も少なくないのではないでしょうか。

現場改善でも同じように、作業測定を実施してみると、今まで当然のように思われていたことが事実とは異なることも多々見えてきます。思っていたよりも時間が掛かっていた、思っていたよりも非生産的な時間が多かった、思っていたよりも余裕があり過ぎた等、「思っていたよりも」という言葉は改善のキーワードでもあるのです。

「思っていたよりも」、これを明らかにするために、時間研究により現状の姿を時間として捉える取り組みは欠かせません。

時間研究の狙い

以上のことを踏まえ、時間研究の狙いは次の通りです。

まずは生産に役立たない時間である「非生産的要素」を発見することです。時間という切り口で現状を見つめることで、改めて非生産的要素の大きさに驚かされることも多いものです。

そして、非生産的要素を明らかにすることにより、方法研究を助けることも狙いの1つです。方法研究の際には、改善前後の状態を比較するために時間による評価を行います。

時間の評価において時間研究の考え方を活用することにより、方法研究で効果を創出することにも繋がるのです。

一般に、作業・業務の中では、収益に役立たない時間は収益に役立つ時間に対して、非常に大きな値となっています。

そこで、時間研究で仕事の中に潜んでいる非生産的要素の内容を定量的に把握し、方法研究によりそれらを削減していくことで、収益に役立つ時間を増やしていかなければなりません。

では、どのような視点で時間を明らかにしていけばよいのでしょうか。基本は時間を3つの分類で捉えることです。

時間に関する3つの分類

時間に関する3つの分類は、価値作業、付随作業、ムダの3つです。全ての作業は、これら3つに分類することができます。

価値作業とは、利益を出す(付加価値に繋がる)作業のことです。形状・性質等、物を変化させる作業が該当し、出来る限り増やしたいものとなります。

付随作業とは、完全にムダではないが、付加価値に直結しない作業のことです。今のやり方では必要な作業となりますが、出来る限り削減したいものとなります。

ムダとは、付加価値に結びつかないため、すぐにでも削減すべき作業のことです。

この中で、付随作業とムダを合わせて「広義のムダ」と呼ばれ、特に削減していきたい対象となる時間です。

3つの分類の例

なお、それぞれの作業の例を挙げるとこのようになります。

価値作業は、加工や機械操作など。
付随作業は、段取りや測定、記録、清掃など。
ムダは、空歩行、手待ち、チョコ停、不良を作る時間などです。

時間研究では、対象となる作業が、価値作業時間、付随作業時間、ムダ時間のどれに該当するのかを注意深く観察します。その上で、付随作業時間とムダ時間をいかに削減するか、方法研究も活用しながら取り組んでいきます。

なお、価値作業時間、付随作業時間、ムダ時間がどのくらいの割合となっているかを調査する方法は、「稼働分析」と言います。稼働分析は時間研究の1種ですが、大事な考え方であるため、別講座「稼働分析の考え方と活用法」として詳細の学習を行います。

本講座では、時間の測定の仕方や時間の見積りや判断の仕方である標準時間・レーティングについて詳細を学習していきます。

2. 時間研究の方法と視点

それでは次に、時間研究の方法と視点について確認していきます。

ストップウォッチ法、VTR法、標準時間、レーティング、PTS法・・・

時間研究の方法・視点は次の通りです。

現状の時間を測定する方法としては、ストップウォッチ法、VTR法があります。ストップウォッチや動画を用いて、作業時間や作業方法を観察する方法です。昔とは異なり、ITツールが発展した現代では、作業動画の撮影も手軽に行えるようになりました。

基準の時間を設定するための方法としては、レーティングと標準時間の視点を押さえておきましょう。観察された作業時間や作業方法に対して、標準の時間や速度を決めるための考え方です。

基準値から全体の時間を見積るための方法としては、PTS法が挙げられます。基本動作に対して基準の時間を決め、それをもとに全体の作業時間を見積るための手法です。

第1章では、この中で、ストップウォッチ法とVTR法について詳細を確認します。
第2章ではレーティング、第3章では標準時間、第4章ではPTS法について詳細を確認します。

ストップウォッチ法、VTR法の違い

では、第1章で学ぶストップウォッチ法とVTR法に関する概要です。

ストップウォッチ法とは、現場に行き、直接自分の目とストップウォッチを使いながら作業を観察・分析する方法のことです。

VTR法とは、動画で撮影した現場の作業をパソコンで見ながら観察・分析する方法のことです。VTRは、ビデオテープレコーダー(Video Tape Recorder)の略です。
現代ではスマートフォンが普及しているので、ビデオテープレコーダーを使う機会はないですよね。ビデオテープレコーダーを使わなければいけないのではなく、昔の名残でこの名前が残っていると思って頂いて構いません。

これら2つの方法のポイントとしては、ストップウォッチ法は現場で直接観察を行う方法、VTR法は、撮影した動画をパソコンで観察する方法ということです。
ストップウォッチ・VTRという名前を気にし過ぎず、直接観察と動画観察の違いと認識すれば大丈夫です。

これら2つの方法は、どちらが良い・悪いという訳ではなく、状況に応じてしっかりと使い分けることが大切となります。

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3. ストップウォッチ法とは

それでは、ストップウォッチ法の詳細について確認していきましょう。

分析の基本は三現主義

まず大前提として、時間研究に関わらず、分析の基本は三現主義です。

実務でも改善でも、机上だけではなく、現場に行って、現物を見ながら、現実を受け止める姿勢が必要不可欠です。動画などを簡単に撮ることが出来るからと言って、現場に全く出向かない人もいますが、それではその時点で上手くいかないのが目に見えています。なぜならば、現場に行ってその場の雰囲気を読み取ることは分析の精度を左右するからです。

もともと対象にしようと思っていた作業を観察しに現場に行ったが、気付いていなかった他の問題の影響が大きいことが分かった、というようなケースはよくあるものです。
まずは現場に行くこと、これを忘れてはいけません。

従って、時間を測定するための方法としては、ストップウォッチ法が基本になります。

ストップウォッチ機能を使おう!

ストップウォッチ法における観測ツールは、もちろんこのようなストップウォッチですね。

開始・停止のボタンと、ラップタイムが計測できるタイプのものを選定しましょう。

スマートフォンのストップウォッチ機能も活用できますね。開始、停止、ラップタイム等、ストップウォッチ以上に便利なツールです。

従来のストップウォッチにこだわる必要はありません。使いやすいツールを上手くミックスして活用していきましょう。

ストップウォッチ使い方は事前に確認しよう

ストップウォッチやスマートフォンのストップウォッチ機能を使った作業観察の方法を念のため確認していきます。目的に応じた観測用紙を用意し、計測、メモをしながら進めていきましょう。

ここでワンポイントです。スライドに載せているスマートフォンのストップウォッチ機能は、あくまでイメージ写真です。
使用するスマートフォン、アプリの違いによって使い方や見方は大きく異なるため、自分が使うものの使用方法を事前にマスターしてから実施するようにしてください。
現場に出てから使い方を確認していたのでは、ムダな時間が多すぎます。また、観測できていると思っていても、終わってみたら時間が記録できていなかった、ということにもなりかねません。
しっかりと準備をした上で観測に臨むようにしましょう。

ストップウォッチ法の観測ステップ

観測ステップとしては、次の通りです。

まずは、作業を観察しながら作業手順を洗い出します。これは、出来れば事前に洗い出しがされており、観察しながらそれが正しいか確認し、必要に応じて修正するような段取りが理想です。

事前に手順を洗い出せない場合には、まずは時間測定の前に手順を洗い出すことから始めましょう。

状況に応じて計測回数を決めよう!

次に、各作業手順に沿って、時間を計測していきます。

ストップウォッチやスマホの時間測定結果(ラップタイム・トータルタイム)を表に落としていきましょう。1度の計測だけではなく、複数回計測を行った方が、より正確な結果を得ることができます。

作業時間のバラツキが小さい場合には2,3回計測すれば十分ですが、バラツキが大きい場合には10回以上計測した方がよい場合もあります。「必ずこの回数」という基準はありませんが、計測に確保できる時間等も考慮し、バランスを見ながら実施するようにしてください。

ストップウォッチ法のメリット、デメリット

ストップウォッチ法のメリット、デメリットを整理しましょう。メリットは、現場に出て分析を行うため、周囲の状況なども含めて調査・分析を行うことが出来ることです。また、分からないことや気になったことをその場で確認できるので、分析が早いことが挙げられます。

デメリットは、目視で行うので、細かい動きを追いきれない場合があることや、同じ動きを繰り返し確認できないことです。全く同じ瞬間は二度とやってきません。「今の動きをもう1回」というのは、現場ではなかなか出来るものではありません。

これらのデメリットを解消するために、VTR法の活用が有効となってくるのです。

4. VTR法とは

それでは、VTR法について確認していきましょう。

VTR法のメリット

VTR法のメリットは、
・動画を再生しながら作業を観察できるので、自分のペースで止めたり再開したりできること
・何度も再生しながら分析を進められるので、分析の精度が高くなること
・1つの動画を見ながら複数人で動作を分析するのに適していること
等が挙げられます。

1つの画面、1つの作業を複数人で見て議論をしたり、繰り返し確認したりできるのは、VTR法ならではのメリットですね。

動画再生による分析のイメージ

動画再生による分析のイメージは次の通りです。

まずは、何度か動画を見て作業手順を洗い出します。作業の大きさが同じくらいになるように、作業手順を分解しながら順番通りに書き出していきましょう。

作業の大きさとは、「IE・インダストリアルエンジニアリングの概要 第3章:IEの対象と活動への取り入れ方」の解説を参考にしてください。簡単に言うと、「5分で運搬する」という作業と、「2秒で部品を取る」という作業は大きさが異なるため、それを混ぜないようにするというものです。

分析の精度が上がるように、なるべく同じくらいの大きさで作業を並べるようにしてください。

パソコンの動画再生ソフトを駆使しよう!

そして、各作業の終了タイミングで動画を止めて時間を記録していきます。

パソコンの動画再生ソフトは、例えばこのように、再生・一時停止ボタンと再生時間が表示されるので、そこを見ながら進めていきましょう。動画再生ソフトにより再生ボタンや時間表示のレイアウトは異なりますので、使う際にはそれぞれのソフトに合わせて行うようにしてください。

複数の異なるタイミングで撮った動画を分析すると精度アップ

そして、各作業の所要時間を計算します。Excelの計算式等を使い、各作業の時間を計算していきましょう。

なお、動画再生により分析を行う際には、同じ動画で複数回計測する必要はありません。
同じ作業を異なるタイミングで行った動画がある場合には、それぞれ計測を行い平均を出すことで精度が上がります。
ただし、作業手順が違うものや作業時間が異なるものに対して平均を出してしまうと、逆に精度が下がることになりますので注意してください。

VTR法のデメリット

VTR法のデメリットについても確認しておきます。

・ビデオカメラやパソコンが必要であること
・動画を撮影する手間が掛かること
・動画データの取り扱いをしっかりと行う必要があること(セキュリティ、日付、容量など)
・1度で目的の動画を取れないことがあること
・現場を見ずに動画だけで分析をすると、本来気付くべきことに気付けないことがあること(現場の空気感や周囲の動きなど)

動画で分析する際には、これらのことに留意して行うようにしてください。

高速動画も有効なツールの1つ

なお、機械の動きの確認などには高速動画の活用も有効です。

高速動画は、目視では確認できないような高速の動きも分析可能となります。

現代は、スマホ等で簡単に動画が撮影できる時代です。ITツールを積極的に活用していきましょう。

5. 時間研究における改善の視点

それでは次に、時間研究における改善の視点について確認しましょう。

改善の4つの視点

ストップウォッチ法やVTR法で時間研究を行う際に欠かせない改善の視点は次の通りです。

1つ目は、「各動作の必要性を見直す」ことです。
ECRSの原則に当てはめ、止められる動作はないのか、同時に行うことは出来ないのか等を検討しましょう。動作を無くすことができれば時間短縮の効果は大きいものになります。
ECRSの原則を忘れた場合は、講座「IE・インダストリアルエンジニアリングの概要」の第4章を再学習してください。

2つ目は、「長い時間が掛かっている手順の時間を減らす」ことです。
パレート図により手順毎の作業時間の影響度を見える化し、ボリュームが大きいものを削減することで、全体の時間が短縮できます。作業時間全体に占める割合が小さいものよりも、全体に占める割合が大きいものを無くすために時間を掛ける方が合理的です。
パレート図を忘れた場合は、講座「IE・インダストリアルエンジニアリングの概要」第3章のP-Q分析を再学習してください。

3つ目は、「作業時間のバラツキから改善点を見つける」ことです。
作業時間にバラツキがある手順は、必ず問題が潜んでいると考えます。やりにくい手順がある、難しい手順がある、神経を使う手順がある等、必ず何らかの問題があるためバラツキが発生します。逆に、時間が一番短かった時のやり方を再現できるように研究することも有効です。なぜ速く作業ができたのかにも、同じく理由があるものです。

4つ目は、「作業者間の時間の違いから改善点を見つける」ことです。
作業時間が速い人は必ず何らかの工夫をしているものです。それを標準化して遅い人に訓練を行うことで、作業者間のバラツキを小さくすることができます。

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6. 第1章まとめ

最後に、第1章のまとめをしましょう。
第1問、時間研究とは何でしょうか。
仕事を要素に分割し、その実態を時間という尺度で定量的に測定・評価し、問題点を分析するための手法のことです。
第2問、現状の姿を時間として捉えることはなぜ必要でしょうか。
感覚は正しいことも多い反面、間違っていることも少なくないためです。
作業測定を実施してみると、今まで当然のことのように思われていたことが事実とは異なることも多々あります。
第3問、ストップウォッチ法とVTR法の違いは何でしょうか。
現場での直接観察とパソコン等による動画観察という違いです。
どちらが良い・悪いという訳ではなく、状況に応じてしっかりと使い分けることが大切です。
第4問、VTR法のデメリットは何でしょうか。
・ビデオカメラやパソコンが必要、動画を撮影する手間が掛かる
・動画データの取り扱いをしっかりと行う必要がある
・1度で目的の動画を取れないことがある
・現場を見ずに動画だけで分析をすると、本来気付くべきことに気付けないことがある(現場の空気感や周囲の動きなど)
以上がデメリットとして挙げられます。
特に最後のデメリットはしっかりと意識し、VTR法を使いながらも必ず1度は現場に足を運ぶなどの姿勢を忘れないようにしなければなりません。
第5問、時間研究の際に欠かせない改善の視点を挙げてみましょう。
・各動作の必要性を見直す
・長い時間が掛かっている手順の時間を減らす
・作業時間のバラツキから改善点を見つける
・作業者間の時間の違いから改善点を見つける
これらの改善の視点を意識しながら時間研究を行うとより多くのことに気付けるはずです。
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講義完了!

以上で、「第1章:時間研究の概要」の講義を終わります。引き続き、「第2章:レーティングの考え方と評価方法」の学習に進みましょう。
参考文献はこちら。

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