工程分析は、方法研究に属する手法の1つです。各工程のモノの流れあるいは人の仕事の流れを掴むために、分析の初期段階で実施されることが多い手法となります。本講義では、工程分析はどういうものなのか、定義や考え方、実際の活用方法について学習を行ないます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-002:工程分析の考え方と活用法
第1章:工程分析の概要と単純工程分析 ⇒このページはココ!
第2章:詳細工程分析(製品工程分析・作業者工程分析)~前編~(会員限定公開)
第2章:詳細工程分析(製品工程分析・作業者工程分析)~後編~【法人向けサービスにて提供中】
第3章:流れ線図(フローダイアグラム)【法人向けサービスにて提供中】
「第1章:工程分析の概要と単純工程分析」動画講義
「第1章:工程分析の概要と単純工程分析」スライド講義
本講座の目次
第1章:工程分析の概要と単純工程分析
第2章:詳細工程分析(製品工程分析・作業者工程分析)
第3章:流れ線図(フローダイアグラム)

第1章学習スタート!

第1章目次
1. 工程分析とは
2. 工程分析図(プロセス・チャート)とは
3. 単純工程分析とは
4. 単純工程分析の進め方
5. 第1章まとめ

1. 工程分析とは

工程分析は方法研究に属する手法の1つ
本章では、工程分析の概要・種類と分析のイメージについて確認していきます。

一定の記号で図表化する
ここでワンポイントです。工程とは、ある段階から次の段階へと進むにつれて完成(又は完了)に近づいていく区切りのことを指します。生産や事務作業の流れには様々な順序がありますが、一定の切り口で区切ることで、仕事の段取りや管理がしやすくなります。
工程分析により、作業の流れや手順の全体像を把握することが出来ます。
従って、より詳細な手法を適用する前の予備調査として活用されることが多いのが、この工程分析です。

工程分析の種類と特徴
1つ目は、単純工程分析です。「作業」と「検査」の系列だけを対象として、工程の流れや状態を分析する方法です。
2つ目は、詳細工程分析です。「作業」と「検査」に加え「移動・運搬」や「手待ち・停滞」「保管・貯蔵」などの状態も含めて分析する方法です。
なお、詳細工程分析には2種類あります。
1つは製品工程分析で、モノを中心に分析を行なう方法で、もう1つは作業者工程分析で、作業者を中心に分性を行なう方法です。詳細工程分析に関しては、第2章で詳しく学習を行ないます。
3つ目は、連合作業分析です。人と機械・人同士の組み合わせ作業に対して、時間的の経過の面から関連を分析する方法です。連合作業分析は、動作研究や時間研究の内容も含まれてくるため、別講座「方法研究と作業測定を組合せた応用的手法」で詳しく学習を行ないます。
4つ目は、運搬経路分析です。流れ線図とも言います。各レイアウトに対してモノまたは人の移動経路を線図にまとめて分析する方法です。流れ線図に関しては、第3章で詳しく学習を行ないます。

工程分析の活用シーン
・より詳細な分析に先立って、工程全体の流れを把握するため
・改善を行なう際に、重点的に取り組む工程を特定するため
・レイアウト改善、運搬改善のための現状調査のため
・リードタイム短縮のための現状調査のため
・工程設計や工程編成の基礎資料として活用するため
これらのシーンがあった時は、「あ、工程分析が使えるな」とすぐに思えるようになったらバッチリですね。

2. 工程分析図(プロセス・チャート)とは

3種類のプロセス・チャート
今回この講義で学習するプロセス・チャートは、次の3種類です。
1つ目は、単純工程分析(オペレーション・プロセス・チャート)です。生産工程のプロセス全体を一目で把握できることが特徴です。
2つ目は、詳細工程分析(フロー・プロセス・チャート)です。オペレーション・プロセス・チャートによりも詳細に工程を分析できることが特徴です。
3つ目は、運搬経路分析(フロー・ダイアグラム、流れ線図)です。フロー・プロセス・チャートに加えて、人とモノの動線も一緒に見ることができるのが特徴です。

プロセス・チャートのイメージ
オペレーション・プロセス・チャートは、大まかな工程の流れの分析であることが分かると思います。
フロー・プロセス・チャートは、詳細をしっかり分析であることが分かると思います。
フロー・ダイアグラム/流れ線図は、レイアウト上に流れを記載することで視覚的に分かりやすくした分析であることが分かると思います。
工程分析と言っても、1つの種類ではなく、何を分析したいのか?どういう効果を得たいのかによって、選択すべきプロセス・チャートを分けなければいけません。本講義を通して、分析の目的に応じて適切なプロセス・チャートや図が活用できるようなスキルを身に付けていきましょう!

工程分析記号
まずは加工です。〇型の記号で表します。加工には、作業や操作も含まれます。原材料や部品、仕掛品や製品の形状や性質に変化を与えている工程(付加価値を与えている工程)が該当します。
次は検査です。検査には2種類あり、1つは数量検査で、□型の記号で表します。原材料や部品、仕掛品や製品の形状や性質に変化を与えている工程(付加価値を与えている工程)が該当します。もう1つは、品質検査で、◇型の記号で表します。原材料や部品、仕掛品や製品の品質を確認し、基準に対して合格/不合格を判定する工程(品質検査工程)が該当します。
4つ目は運搬・移動で、矢印型の記号で表します。原材料や部品、仕掛品や製品の位置に変化を与えている工程(モノを移動させている工程)が該当します。
最後に停滞です。停滞にも2種類あり、1つは滞留で、D型の記号で表します。原材料や部品、仕掛品や製品が加工・運搬・検査もされずに停滞している状態が該当します。
もう1つは貯蔵・保管で、逆三角形型の記号で表します。原材料や部品、仕掛品や製品を計画よりも多く貯えている状態が該当します。
以上の6つとなります。なお、それぞれの記号において、負荷価値を生んでいる作業はどれか分かりますか?
そう、加工だけになります。検査、運搬・移動は付随作業、停滞はムダに分類されます。検査作業に関しては、価値作業に分類することがありますが、これは、顧客から認められた検査であり、その検査の対価としての金額を受け取れる場合のみとすることが多いと覚えておきましょう。
プロセス・チャートで分析を行なった結果、付随作業やムダの記号が多い場合は、改善の余地が大きいと判断することができますね。

工程分析の複合記号
加工を主として行いながら、数量検査も同時にを行う場合は、〇の中に□の記号で表します。モノを手に取った時に数も一緒に数える時などが該当しますね。
加工を主として行いながら、運搬も同時に行う場合には、〇の中に矢印の記号で表します。作業をしながらモノの場所を動かす時などが該当しますね。
数量検査を主として行いながら、品質検査も同時に行う場合には、□の中に◇の記号で表します。
品質検査を主として行いながら、数量検査も同時に行う場合には、◇の中に□の記号で表します。
これらの複合記号は、主となる方が外側、副人なる方が内側と覚えておけばよいですね。
なお、これらの複合記号は、主となるもので判断します。ここに挙げている複合記号の場合、価値作業、価値作業、付随作業、付随作業となりますね。

工程分析のイメージ
この作業における工程分析は、次のようになります。
パレティーナ内で待機
↓
製品取り出し
↓
検査台へ移動
↓
品質検査
↓
トレーへ移動
↓
トレーへ製品収納
↓
トレー内で待機
このように、工程分析の基本は、作業を工程分析記号を用いて順番に並べていくだけです。このように並べてみると、付加価値を付けている工程が何個あるか、移動や停滞がどのくらいあるか等を数値で判断できるようになります。
基本はこの考え方であり、決して難しいものではありません。苦手意識を持たないようにしましょう。

工程分析における改善の着眼点
加工(作業、操作)に関しては、
・そもそも加工・作業を無くせないか、他の仕事と一緒に出来ないか
・工程順序を変えられないか、材料・機械・人を変えたら改善しないか
・連合作業分析や動作研究など他の手法で改善出来ないか
等が着眼点です。
検査に関しては、
・そもそも廃止できる検査は無いか
・ポカヨケや治具を使って簡素化出来ないか
・加工や運搬工程で同時に出来ないか
・検査基準は適正か、過剰な基準ではないか
・連合作業分析や動作研究など他の手法で改善出来ないか
運搬・移動に関しては、
・運搬(移動)を無くせないか、運搬(移動)回数を減らせないか
・運搬(移動)距離や時間を減らせないか
・運搬(移動)中に他の仕事や検査が出来ないか
・レイアウト改善や工場内物流改善により改善出来ないか
滞留に関しては、
・停滞(手待ち)を無くせないか、ゆっくりでも移動させられないか
・停滞(手待ち)回数や時間を減らせないか
・停滞(手待ち)中に他の作業が出来ないか
・レイアウト改善や運搬活性分析により改善出来ないか
貯蔵・保管に関しては、
・そもそも貯蔵は本当に必要なのか
・時間やロット数を減らせないか
・原材料、部品を共通に出来ないか
・貯蔵中を利用して他の作業が出来ないか
・レイアウト改善や工場内物流改善により改善出来ないか
等が着眼点です。
プロセス・チャートを作成した後は、これらの着眼点を参考にしながら改善を進めていくことになります。

3. 単純工程分析とは

単純工程分析は加工と検査に着目する方法
運搬や停滞等は無視し、どのような作業、検査を行なっているかという、工程全体の概略を掴むことが目的です。

生産工程のプロセス全体を一目で把握できる
特徴として、生産工程のプロセス全体を一目で把握できることが挙げられます。
ここでワンポイントです。単純工程分析図(オペレーション・プロセス・チャート)では、分析の目的に応じて、所要時間、位置等、その他の情報を記入するようにしましょう。書いてはいけないものはありません。必要なものは独自に追記し、自分たちにとって工程全体が一目で分かりやすいものを作成するようにしましょう。

単純工程分析図(オペレーション・プロセス・チャート)の活用シーン
- 詳細工程分析の前段階として全体を掴むために活用する
- 新製品や既存製品の工程の全体像・流れを可視化し、QC工程図等へ活用する
- 原材料や部品の搬入と各工程との関連を確認する
- 全工程数や各工程の工数を把握し、各種見積もりに活用する
QC工程図で見たことがある方も多いかもしれませんね。

4. 単純工程分析の進め方

単純工程分析のステップ
① 目的を明確にする
②対象を決める
③ 調査時期や方法を決める
④オペレーション・プロセス・チャートへまとめる
それではオペレーション・プロセス・チャートの描き方を確認します。

単純工程分析図(プロセス・チャート)の描き方
まず、タイトルを書きます。何の単純工程分析図なのか、後から見て分からなくならないように、誰でも分かるタイトルを書きましょう。
次に、必要事項を書きます。工程名、品名、作成日、作成者等を記載します。
次に、メインの工程の流れを描きます。
そして、メインの流れに合流する材料や工程の流れを描いて合わせていきます。
流れの各工程に対して、必要に応じて所要時間などを記載しましょう。

工程の合流、分岐の描き方
組み立て生産方式では、このように、線の上に合流・分岐させる描き方をします。
一方、装置生産方式では、このように、記号に合流・分岐させるような描き方をします。
また、手直し合流がある場合は、このような描き方をします。基本的にはフローチャートのような図を順番に描いていくだけなので、あまり難しく考えずに、「まずは描いてみる」ことが大切です。

5. 第1章まとめ


講義完了!



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法人会員サービス、個別コンテンツ学習サービスで活用するeラーニングシステムでは、再生スピードの変更や字幕機能、進捗管理機能、理解度確認テスト等を利用することができるため、“必ず学習させたい” “理解度を確認しフォローしたい”というニーズにピッタリです。
もちろん、パソコンかスマホとインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学習が可能です。
工程分析は、方法研究に属する手法の1つです。各工程のモノの流れあるいは人の仕事の流れを掴むために、分析の初期段階で実施されることが多い手法となります。本講義では、工程分析はどういうものなのか、定義や考え方、実際の活用方法について学習を行ないます。
IE的視点でムダを見つける目を養い、ムダを取り除く過程を通して、人材育成と筋肉質な現場の構築を目指していきましょう。
i-002:工程分析の考え方と活用法
第1章:工程分析の概要と単純工程分析 ⇒このページはココ!
第2章:詳細工程分析(製品工程分析・作業者工程分析)~前編~(会員限定公開)
第2章:詳細工程分析(製品工程分析・作業者工程分析)~後編~【法人向けサービスにて提供中】
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