マーケットインとプロダクトアウトは、ものづくりにおいてはとても大事な概念ですが、それぞれの意味はご存知ですか?「マーケットイン」、「プロダクトアウト」について全く知らないという方も、自信を持って答えれないという方も、この機会にしっかり理解しておきましょう。
「マーケットイン・プロダクトアウトとは?」動画講義
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マーケットイン・プロダクトアウトとは?
つまり、「顧客が望む売れるモノだけを売る」という考え方で、顧客のニーズありきで商品開発を行ないます。
一方、プロダクトアウトとは、「会社の方針や作りたいもの・売りたいものを基準に商品開発を行うこと」を指します。プロダクトを作ってから、どのように販売していくかを考えるスタイルです。
つまり、「良いものであれば売れる」という考え方で、自社の技術や強みを生かした商品展開を行ないます。
書籍等を読むと、この2つの言葉は対比されて書かれていることが多く、マーケットインには良いイメージを、プロダクトアウトには悪いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
日本は、高度経済成長期に「プロダクトアウト」の考え方で大量生産を行ってきました。しかし、経済成長が止まり過剰供給になると、「いくら良い商品でも売れない!」という事態となりました。
そこで、多くの企業では、「顧客ありきの発想」へと転換が迫られ、結果として「マーケットイン=善」の考え方が定着していったのだと考えられます。

誤解されがちな意味
マーケットインは“善”
プロダクトアウトは“悪”
この理解の仕方は間違っており、そもそもマーケットインとプロダクトアウトを比較すること自体がナンセンスなのです。
なぜなのでしょうか?

プロダクトアウトからマーケットインへ・・・???
「マーケットインで考えている企業はユーザーを優先している」
という考え方が必ずしも正しくないことは、過去の革新的な製品を見てみれば分かります。
例えば、Apple社のiPhone。
iPhoneは、デザイン性はさることながら、「直感的な操作性」を追求したことで、世の中に大きなインパクトを与えました。
携帯電話(フィーチャーフォン)で採用されていた「ボタン型」ではなく、「タッチ型」にするという発想は、それまでにないものでした。
プロダクトアウト型で大成功した製品の代表例と言えますね。
その他にも、SONYのウォークマンや、googleの検索等もプロダクトアウト型の製品として挙げられます。
これらの製品は、発売までニーズすら存在していなかった製品であり、顧客にニーズをヒヤリングしても作れるものではありません。
このように過去を振り返ってみると、時代を変える革新的な製品を生み出す企業は、多くが「プロダクトアウト」タイプであることが分かります。プロダクトアウトは“悪”であるのかというと、決してそんなことはないのです。

マーケットインか、プロダクトアウトかは手段
顕在化したニーズに対しては、マーケットイン型のアプローチ、潜在的なニーズに対しては、プロダクトアウト型のアプローチが必要です。
つまり、マーケットインでアプローチするのか、プロダクトアウトでアプローチするのかは、「どういった顧客のニーズ」に応えるのかによって変えていかなければいけないのです。
それでは、マーケットインとプロダクトアウトのそれぞれのアプローチのメリットとデメリットを確認してみましょう。

マーケットイン型のメリットとデメリット
メリットとしては、
顧客ニーズがあることが分かった上で商品開発を行なうため、ほとんどの場合一定の需要確保が期待出来ること
失敗するリスクを最小限にした商品展開が出来ること
等が挙げられます。
一方、デメリットとしては、
顧客が求める商品だけを展開するため、顧客の期待を超える革新的な製品やサービスが生まれにくいこと
製品やサービスが真似されやすいことにより、市場がコモディティ化しやすいこと
結果的に、価格競争に陥りやすくなること
等が挙げられます。

プロダクトアウト型のメリットとデメリット
メリットとしては、
自社の技術戦略を商品開発に活かせること
画期的な製品やサービスによって独占的な市場を作り出すことができる可能性があること
成功した時、非常に大きな利益を得られる可能性があること
等が挙げられます。
一方、デメリットとしては、
顧客に対してこれまでにない製品の魅力をうまく伝え、購入まで結びつける必要があること
当初想定していた程の顧客ニーズが無く、商品開発への投資が回収できない可能性があること
等が挙げられます。

まとめ
ターゲットのお客様は誰なのか見極めること。
そして、そのお客様の顕在化したニーズ、あるいは潜在的なニーズを満足させるには、どのような製品やサービスを創りあげればよいのかをしっかりと考えること。
この2つのことが大事なのです。
そのことが、お客様のニーズを満足させることになり、驚きと感動を与えることに繋がっていくんでしょうね!

2つを両輪として考える戦略が重要
ニーズが顕在化している市場では、プロダクトアウト型の発想だけで、自社の作りたいもの、売りたいものだけを商品展開していくことは今の時代では受け入れてもらえません。
また、いくら革新的な商品を売り出したいと言っても、プロダクトアウト型の戦略だけでは、外れたときのリスクが大きすぎます。
一方で、マーケットインの考え方で市場調査を行ない、顧客のニーズを把握するだけでは、革新的な製品は生まれません。
また、マーケットイン型の確実な商品展開だけでは、新たな価値を創出することはできず、大きな利益を上げることも難しいのが実態です。
従って、マーケットインで顕在化しているニーズを確実に追求しつつ、プロダクトアウトで潜在化しているニーズを発掘していくという、両輪がバランスの取れた形で戦略を組み立てていくことが必要不可欠なのです。
今回は、なんとなく理解したつもりになってしまいがちな、「マーケットイン」と「プロダクトアウト」について解説しました。
2つの言葉の意味と意図をしっかりと理解し、イメージ論で良し悪しを議論するのではなく、正しくモノゴトを捉えるクセを付けていきましょう。

以上で、「マーケットイン・プロダクトアウトとは?」の講義を終わります。
このコンテンツが、あなたの今後の活動に役立つことを、心から願っています。
引き続き、その他の講義も是非ご覧ください。
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カイゼンベース株式会社
執行役員CCO 井上 勝貴
シャープ株式会社の液晶ディスプレイ工場にて、生産技術開発グループリーダーとして生産技術向上プロジェクト推進を担当後、製造系大手コンサルティングファームでは、製品品質改善、生産速度向上、設備トラブル改善、原価低減等の数々のテーマを実行。現在は、カイゼンベース株式会社の執行役員CCO(Contents Chief Officer,コンテンツ品質保証兼法人ユーザー支援責任者)として、クライアント企業様の人材教育体系の構築やその実行支援、実践コンサルティングを行なっている。
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